”アクティブ運用はインデックス運用に勝てない”というのが、個人投資家の間で半ば常識化しつつあるようで、S&P Globalの公表データによれば、多くの国でアクティブ・ファンドの8~9割近くが負けているようです。
データはこちら→https://www.spglobal.com/spdji/jp/research-insights/spiva/#us
こういう話を聞くと、「勝っている1割のアクティブ・ファンドは何者なのか?」という疑問が湧いてきますよね。
個人的には、巷でささやかれているインデックス vs アクティブの議論は、チョキ vs グーぐらいの短絡的な議論であり、ポートフォリオ全体における役割分担の問題だと思っていますので、勝つとか負けるとかの二律背反の論調はあまり好きではありません。
(世の中にはちゃんと建設的な議論を展開している人たちもたくさんおり、そういう人たちのディスカッションを聞くのは好きです。念のため。)
ですが、本記事では、あえて単体のアクティブ運用がインデックスに勝てる可能性や条件について考えてみたいと思います。
議論の始まりは1974年にさかのぼる
アクティブ vs インデックス運用の議論は、現代経済学の基礎を築いた伝説の経済学者ポール・A・サミュエルソンが1974年に発表した論文”Challenge to Judgment“(判断の挑戦)が発端となりました。
(名前は呼び捨ての方が、なんとなく偉人感が出るので、このまま呼び捨てで行きます)
この論文でサミュエルソンは、米国株式のアクティブ運用がS&P 500に、高い再現性と持続性を持って勝利することは極めて困難であることを主張しました。
この論文が、The Vanguard Group(バンガード)の創設者ジョン・ボーグルがインデックス投資の成功を確信する強力な後押しとなったことはあまりにも有名です。
アクティブ運用はなぜ負ける?
アクティブ運用が負ける要因については、運用にかかる費用によるものというのが主流な説となっています。
これまた伝説の経済学者ケネス・R・フレンチが2008年に発表した論文”The Cost of Active Investing“(アクティブ運用の費用)では、
アクティブ運用は年間平均0.67%インデックス運用に負けている
という分析結果が出ています。
ここで考えたいのが、アクティブ・ファンドの運用報酬がだいたい0.7~1%のものが多いということです。
日本の公募投信だと2%近いものが多いですかね。
運用報酬の他にも銘柄の売買などのコストもかかっていますので、実際にかかっている費用はもっと高くなるはずです。
一方のインデックス運用の運用報酬は0.1%とかですので、負け分が0.67%というのは少ないように感じます。
何が言いたいかというと、
アクティブ・ファンドは、銘柄選択では勝てる(が結局費用で負けている)のでは?
ということです。
先ほど出てきた、論争の発端になったサミュエルソンも、経済全体では市場の効率性が働いているが、個別企業レベルでは効率性が損なわれている(チャンスの)可能性を指摘しています。
インデックスに勝てるアクティブ運用の条件は?
以上のことを教訓に考えると、インデックスに勝てるアクティブ運用の条件として最低限ほしいのは、
①運用報酬が低め
②ポートフォリオの売買回転率が低い
③個別銘柄の投資機会を捉えている(保有銘柄数が少ない)
ということになるでしょうか。
次回の記事では、これらの条件から、実際に勝っているアクティブ運用をいくつか探してみたいと思います。
※これまで勝っていることが、これからも勝ち続ける根拠にはならないので、その点は注意です。
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